一般財団法人感性科学協会

一般財団法人感性科学協会(略称ASA)について

設立の背景

日本感性工学会(JSKE/Japan Society of Kansei Engineering)は1998年に設立されました。その折の若干のエピソードは学会誌にあります。ひとつは初代会長の公式風、もうひとつは筆者の裏話風です。(後掲添付参照)

当時、日本学術会議の第5部(工学)のなかに、領域別(機械とか電気とか)ではなく、課題別の委員会が設置されていました。すなわち「人間と工学研究連絡委員会」で、そのなかに医用生体工学・安全工学・人間工学・感性工学という4つの工学の専門委員会が構成されました。吉川弘之会長の時代であります。

その専門委員会にさらに小委員会が設けられ、そこに集った方々のなかの有志数名が資金を預け合い、300万円くらいの準備金をプールして創設準備活動をいたしました。吉川会長は、この学会の創設について、「実施するなら相当の覚悟をもって」と助言を受けたとのことでありますが、機械や電気のように体系が確立した分野と異なり、よほどしっかりした心構えなしには、胡散霧消しかねないと思われたのでしょう。

しかし、発足して活動を続けていきますと、次第に会員も増え、英文誌を含め、投稿論文数も増加しました。当初、英文誌も和文誌なみに年4回刊行するという意気込みでしたから、4回分の費用(印刷・配送費用)を計上したのですが、さすがにそれは無理で、その分、資金が余ってきました。そこで、有志から預かった資金を返済しても、何とか会務を継続していく基礎ができ始めました。

学会の本務は投稿や研究発表が充実・増加することにあります。雑用をできるだけふやさないという方針で運営してまいりました。ただ日本感性工学会は任意法人です。身軽で柔軟に運用できる大きなメリットを備えますが、任意法人の理事者は無限責任であります。国際会議ひとつ実施すれば、数百万の赤字が出ないとも限りません。万が一、赤字が生ずれば、理事者は身銭で弁済することになります。ですから、財政的基盤はできるだけしっかりさせる必要がありました。

20年経過した2018(平成30)年。任意法人である日本感性工学会(以下JSKE)が20周年を迎えたのを折に、日本感性工学会の溜まった資金5000万円を基金にして、一般財団法人感性科学協会(以下ASA/Affective Science Association)を設立いたしました(法人番号:4010005024881)。

信用補完+インボイス対応

このような経緯から、ASAの当初の役割は、感性工学の振興を目指するのほか、JSKEの信用補完機能を果たすことであります。したがって、いわば「custodian」として、ASA自体は、まさに静かに、純資産(資産―負債)を維持する、ことが肝要でした。

2023(令和5)年 10 月1日、「適格請求書等保存方式」が施行されました。いわゆる「インボイス制度」であります。大学の事務の窓口によっては、適格請求書でなければ学会費は支払えないというクレームも聞こえてきました。適格請求書には、適格請求書発行事業者の登録番号を記載する必要があります。任意法人には法人格がありませんので適格請求書を発行できません。そこでASAが適格請求書発行事業者になり、登録番号を取得した次第です(登録番号:T4010005024881)。

ASAはJSKEの会務(大会催事・投稿関連業務)に係わる収納を引き受けることになりました。収納を引き受けた以上は大会催事・投稿関連業務の執行者となり、所要の支出を担う必要があります。ASAはJSKEの会務について共催者となり、所要の責任を果たすことになります。

しかし、ここで消費税に疑問が生じます。会員が集い、相互に研鑽しあう大会催事・投稿関連業務にかかわる会員各位に負担に、消費税を加える必要があるのかという問題です。学会は町内会のようなものだと理解しています。町内の祭事で懇親会を開催したとき、そこで消費税をいちいち課税するのであろうか・・・。

現在、JSKEの大会行事で開催する懇親会費には消費税を加えてご負担いただいております。この方面の業界用語では「対価性」といいます。いまもって釈然とはしませんが、ここで議論をはじめても無意味なので、ASAでは大勢の赴くところ、他学会に準拠し、年会費以外の所要費用につきましては、消費税を乗せて請求いたしております。

将来に向けて・・・JSKE自体の法人化や、ASAの公益法人化

当然のことながら、JSKE自体の法人化や、ASAの公益化は話題にはなります。しかし、法が要求する手続きや処理が増し、事務量が飛躍的に増加するので、人件費や業務委託費の負担が重くなります。それでも公益にすればJSKE会員各位の研究発表が増えるとか、何かメリットがあれば具体に検討もされるでしょうが、目下のところ、利点を見出しがたい状況にあります。
むしろ、会員各位のご尽力により、いまは Impact factorを高めことの方が重要かと存じます。

ASA独自プログラムとしてのナイトセッションの主催・運営

ASAの定款㊟に、「当法人は,感性科学の振興を目的とし,その目的に資するため」事業を行うとあります。単なる経理事務屋・代金収納団体ではありません。共催者として大会催事・投稿関連業務に携わるからには、ASAもまた独自の見解をもち、大会運営にあたるべきであり、独自に研究テーマを設定し、既述の「ナイトセッション」を実施することになった次第であります。

2024/02/28 代表理事 大谷 毅

これまでのナイトセッション実施状況

第19回春季大会(開催期間:2024年3月7-8日)九州大学大橋キャンパスにおいて

「ひらめきと感性工学」・・・2024年3月7日(木) 17:40 〜 19:00 B会場 (5号館 2階 524室)

・「ひらめきと感性工学・・・感性マネジメントの場合」大谷 毅氏(信州大学)

・「自由エネルギー原理から考える「ひらめき」と探究のサイクル-認識・創造性・感情の関係性-」柳澤秀吉氏 (東京大学)

「感性に係る計測評価技術の標準化を考える」・・・2024年3月8日(金) 16:20 〜 17:20 A会場 (5号館 1階 511室)

・「誰か教えて感性計測評価-導入担当者の本音-」小関泰子氏 (ヤマハ発動機株式会社)

・「測った感性はどうやって活かす?」三井一志氏 (日本特殊陶業株式会社)

・「感性の定量計測・評価手法に係る標準化について-眠気検知技術における事例のご紹介-」石田健二氏 (株式会社デンソー)

第25回年次大会(開催期間:2023年11月20ー22日)タワーホール船堀において

パネル討論会:11月19日(日)18時~19時 「感性工学現在・過去・未来」座長:庄司裕子氏(中央大学)(ハイブリッド)オンサイト会場:4階 研修室(E会場)

特別講演:11月21日(火)18時~19時 「感性のプリンキピアを拓く―自由エネルギー原理を起点として」 柳澤秀吉氏(東京大学)(ハイブリッド)オンサイト会場:2階 蓬莱(E会場)

パネル討論会(会長記念セッション):11月21日(火)19時~20時 「男女共同参画と感性」 座長:庄司裕子氏(中央大学)オンサイト会場:2階 蓬莱(E会場)

特別講演:11月22日(水)16時40分~17時40分 「(仮題)・知性、理性、そして感性」乗立雄輝氏(東京大学)(ハイブリッド)オンサイト会場:4階 研修室(E会場)

パネル討論会:11月21日(火)19時~20時30分 「事業計画と感性&新規事業と感性」座長:高山純人氏(宮城大学)会場:4階 401室(C会場)

フリーディスカッション:11月21日(火)17時~19時 「感性商品の挑戦」座長:長沢伸也氏(早稲田大学) 会場:5階 小ホール(S会場)

研究発表会:11月21日(火)19時~19時30分 「リニア駅と橋本地域発展への期待:鉄道会社と連携したテキストマイニング オンサイト」松原弘明氏 他(東京工業高等専門学校)会場:4階 407室(D会場)

過去のナイトセッション